美味しい抹茶とは

「抹茶の上級品とそうでないものの違いは?」や、「高価な抹茶はやはり味や香りが良いの?」という疑問は、抹茶を飲まれる方や、抹茶を使用した商品企画をされる担当者がぶつかる疑問の一つではないでしょうか。ここでは、美味しい抹茶とは何か、を個人の嗜好として片づけず、品質と価格の違いを踏まえて、プロ(茶師)の視点から解説します。

抹茶の価格と
品質の関係

抹茶は、上級品(高価)になるほど香りがよく、味はまろやかで、苦渋みが少なくなり、旨味(甘み)が濃厚で後味が良くなります。色も上級品になるほど鮮やかなみどり色をしています。それは、旨味を生む十分な肥料や、香りや少ない苦渋みを実現する覆い(遮光)の設備や手間・技術など、多くのコストがかかることに由来します。

品質のよい抹茶(上級品) 品質の悪い抹茶(下級品)
冴えた美しいみどり色 赤みがあったり、
白っぽいみどり色
香気 覆い香と呼ぶ
抹茶特有の良い香りが
ある
覆い香と呼ぶ
抹茶特有の良い香りが
少ない
旨味 多い 少ない
苦渋み 少ない 多い

プロの判断基準

抹茶は、摘採した茶の葉を蒸して乾燥させ、選り分けて臼で挽くだけの、加工が少ないシンプルな飲み物です。したがって抹茶の品質は、原料である「荒茶碾茶」と呼ばれる原料葉の品質にほぼ比例します。

荒茶碾茶の抽出液は、繊細な味の違いを感じやすいということもあり、基本的に抹茶原料茶葉の仕入れや合組(ブレンド)は荒茶碾茶の形状や抽出液による官能検査(人による味や香りの審査)によって行います。

荒茶碾茶の審査6項目
形状
水色
色沢
滋味
香気
から色
賞味品質の審査基準
旨味
覆い香と呼ばれる良い香り
苦渋みの少なさ

荒茶碾茶の審査は、形状、色沢、香気、水色、滋味、から色の6項目で行います。

これらの内、賞味品質に直接関わる滋味・香気の審査基準は、右上表の3つです。形状・色沢・水色・から色の審査により、栽培・製造時の状況を推測したり、抹茶になったときの挽き色を想定したりします。

美味しい抹茶は、
品質の高い荒茶碾茶から

抹茶の美味さをつくる3つの要素は、肥料のやり方、覆いの仕方、適正な茶摘みのタイミングと言えます。旨味の成分とは、アミノ酸です。茶の樹にどれだけよい肥料を、十分に吸収させるかで決まります。つまり、アミノ酸を構成する窒素成分を、肥料として与えるのです。窒素分は、根でテアニンというアミノ酸に合成され、葉に運ばれます。

そして、茶摘み前に行う覆いのタイミングや期間が重要です。覆い香と呼ばれる抹茶特有のよい香りは、その名の通り、適切なタイミングと期間で茶の樹に覆いをすることで生まれます。また、この覆いによって日光を遮りテアニンがカテキンに変わるのを防ぐことで、苦渋みの少ない抹茶になるのです。

最後に、適正な茶摘みのタイミングです。茶摘み時期が早すぎると葉の旨味成分が充実しておらず、覆い期間が不十分です。かといって、茶摘み時期が遅すぎると葉が硬く、味と香りが悪くなります。程良い時期に茶摘みを行うことは、とても重要な要素なのです。

美味しい抹茶品質の高い
荒茶碾茶十分な肥料や
手間がかかり
高価

こうやって、旨味があり、よい覆い香がし、苦渋みが少ない美味い抹茶となる荒茶碾茶がつくられるのです。

上級抹茶は
熟成して美味しくなる

抹茶は風味の劣化を防ぐため、仕立碾茶(原料茶葉)の状態で保存し、需要に応じて挽き上げます。低温除湿の状態で上手に保存すると、熟成しふくよかな香りとまろやかな味がいっそう高まります。

この傾向は上級品ほど顕著であり、並級品以下は熟成せず劣化することもあります。